ごあいさつ


 不安や悲しみ、罪悪や後悔の念、絶望感や孤独感、妬みや憎しみといった心の苦しさは、私たちが誰かとの関係の中を生きる存在である以上、その発生を避けることはできないものだといえます。また、虐待などの不適切な養育やいじめ、ハラスメント、災害といった体験によるトラウマも、その影響は避けがたく、私たちの意識的な制御や願いを超えて心身に多大な苦痛をもたらすものです。このような苦痛はひどく不快なものであるため、多くの人は即座の解消や解決を望みますが、医療が高度に発展した現代においてもそれは容易なことではありません。

 では、このような心の苦しさや困難に対して、私たち心の専門家には何ができるのでしょう。当オフィスでは、来談者が抱えている心の苦しさや困難を、その人がそれまで歩んでこられた歴史やその人独自の感受性や考え方を踏まえながら理解していくことを目指しています。その過程において、その人の心の苦しさや困難は面接場面においても気づかぬうちに反復的に現れ始めます。精神分析的なアプローチでは、このようにして現れる心の苦しさや困難についてその瞬間瞬間に目を向け取り扱っていくことで、心の変化を目指していきます。

 人の心やその苦しさが他者との関係の中で形作られるものであるのなら、それが癒されゆくのも変化しうるのもまた、他者との関係の中においてであると言えるでしょう。精神分析的なアプローチは地道で根気のいる心の作業と言えますが、心を理解し、その苦しみに触れるための専門的でたしかな方法の一つであると考えています。

 

代表 杉本正志


お知らせ

 2024年1月23日

2024年度 関門精神分析研究会のチラシを掲載しました。関心のある方はこちらからご覧ください。