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難治症例と逆転移(福井, 1993)

 筆者は、人と人がつながる時と、別れ(各々の個別性の発見)とは同時におこるものだと思っている。共生Symbiosisの後に分離Separationがあるのではなく、それは同時進行、もしくは分離があるから共生があると考えたい。当然、そのつながり(一体感希求)と別れ(個別性)をめぐって、種々の感情が行き交うことになる。喜びや満足感、うらみや絶望感、尊敬や感謝、等々である。それらの感情が二人の間で交わされ共有されて初めて、つながり、別れることが、体験として残るのである。(p.283)