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「愛着障害」の流布と、概念の混乱(平島, 2017)

 attachmentは生物の生存に必要なものとして動機づけられた、養育者を「安全基地」として認識し接近するという認知-制御システムであり、乳児はその養育者がその意味での「利用可能性(availability)」を有するかどうかを吟味するような心的作業を通して養育者の表象を形成し、その表象に基づいて行動を起こす(Bowlby, 1981)。虐待する親にさえattachmentが生じる理由は、ここにある。すなわち、「(虐待する養育者は)たとえ有害ではあっても、子どもの役割についての明確な表象を含む予測可能で既知性のある経験の方が、役割-関係表象を持たない既知性の低い非虐待的な経験よりも強い安全感を生じさせる」ゆえに、attachmentの対象となりうる(Fonagy, 2001)という。(p.8)