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押しつけがましくない分析者(Balint in Kohon ed, 1986 / 西園監訳, 1992)

 分析者の技法やふるまいが全知、全能を思わせるようなものであればあるほど、患者が悪性の退行に陥る危険性はそれだけ大きくなる。逆に、分析者が患者との間の不平等を少なくできればできるほど、それだけ、患者にとって分析者は被侵入的で平凡な姿に留まり、良性の退行になる機会は大きくなることになる。(p.162)

 

 その領域(基底欠損の領域)において言葉の有用性には限界があって、確実なものとは言い難い。その結果、この時期には、対象関係の方が重要なものとなるし信頼できる治療的要因になるように思われる。とはいえ、患者が退行から抜け出した後では、解釈は再び重要となるであろう。(p.162)