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学校臨床に役立つ精神分析(平井・上田編, 2016)

 そもそも臨床心理学の専門性および特殊性は、クライエントもしくは患者とカウンセラーもしくはセラピスト両者が情緒的な交流を通して立ち顕れることがらを、批判なく、平等に、自由に考えていける時空間を提供するものであろう。すなわちカウンセラーやセラピストの資質は、クライエントや患者との情緒的交流からの産物--それは苦痛を含むものが多いであろう--をしばらくの間、拙速な判断を留保し、それらをカウンセラーはセラピストの心の中に保持しておくことができる能力に他ならない。この点において、「観察と洞察」による訓練をその中心的課題としてるワークディスカッションは、学生の実習報告会に導入される価値ある方法論である。(pp.213-4)