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あいまいさを引きうけて(清水, 2018)

 「学ぶ」などというたいそうな問題を口にするのは、なんともおこがましく、気が引けるのですが、では、本を読んだら人は人とつながることができるのか。「イエス」と私は堪えたい。すぐれた文学は時間空間を超えて人と人をつなげる力をもっていると私は思っています。しかし、そうでない本、人と人とを切っていく本もあります。…(中略)…これだけインターネットが発達して、いろいろなことができるようになって、それでは今、世界が拡がったかというと、そう拡がってはいない気もする。本質的にはあまり変わっていないのかもしれない。…(中略)…学校という所が、人と人を豊かにつなげていく場所ではなくて、切り離していく場所でしかなくなっている。全部とは言いませんが。…(中略)…学校は本来、百点が取れなくても、いくらでも生きていく可能性はあるのだよと、伝え示す場所であるはずなのに、実態はいい点が取れない人たちを断罪し、切り捨てていく場所になっている。そういう現在であるからこそ、私はあえて「本を手に取ってごらん。」と言いたい。(pp.27-8)

 

 ギリシャ神話の古典とまではいかなくても、人間とはどういうものかを書いてくれているものはいっぱいあるのに、そういうものに出会わずにいる人たちがたくさんいて、その中には学校の先生たちも含まれ、私自身ももちろん含め、大人たちは自分の持っている物差しで、世界を、人間を測ろうとしてしまう。測るだけでなく、それはしばしば対象となる人々への攻撃、排除にまで及ぶ。(pp.29-30)