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母子臨床の精神力動(Raphael-Leff ed, 2008 / 木部監訳, 2011)

 夕暮れ、それは覚醒とまどろみ、活動と休止、他者との対話と内省の間に漂っている繊細な時間である。日中には姿を現さなかった不安と憧れが突然に激しい勢いで生じてくる。

 子どもが眠りにつくということは、活動に満ちた日中の後のくつろぎや心地よく暖かな布団、それにおそらくおやすみのキスというご褒美をしばしば意味している。それは遊びや食べ物、そして人と交わることに別れを告げることでもある。眠りにつくことは休息と平穏への要求に屈することを表している。(p.169)

 

 毎晩、安心して穏やかに眠りにつくことは、子どもにとってその後の人生で必ず直面しなければならない、もっと辛い最終的な別れの準備となる。(p.169)

 

 子どもたちは急がされて絶えず加速しながら、同時に抑えつけられてもいる。子ども自身の想像力の発達や、制御能力を少しずつ獲得する余地はほとんど与えられておらず、今日の子どもは凄まじい勢いで次々に現れる出来合いの刺激物、つまりイメージや感覚、印象に攻め立てられている。視覚的に表現された「情報」」をメディアがばら撒き、映像が飛ぶように過ぎ去っていく中、私たちは伝達のスピードや量による長期的、短期的な影響に関してほとんど理解していない。それが与える影響は何だろうか…(中略)…私たちが目の当たりにしている、よりゆっくりとしたペースの語り言葉の文化から、より速いペースのイメージ中心の文化への変化によって、どれだけ多くの人間性が損なわれるのだろうか。特に意味深く安全な世界を自分自身で発見し構築することが最初の使命とされる生まれたばかりの子どもたちに、この変化はどんな影響を与えるのだろうか。(pp.174-5)