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夢分析論(ユング, 1909-1961/ 横山監訳, 2016)

 無意識とは悪魔のような怪物ではなく、モラル的にも、美的にも、知的にも中立的な自然の性質です。それが本当に危険なものになるのは、無意識に対する私たちの意識的態度がどうしようもないくらい間違っている時だけです。私たちが抑圧すればするほど、無意識の危険性は増していきます。しかし、患者がそれまで無意識であった内容を同化することを始めた瞬間に、無意識の危険性も減っていくのです。(pp.21-2)

 

 こころとは自己調整を行うシステムであり、体という生がそうするのと同じようにしてバランスをとっています。行き過ぎた過程に対しては、それが何であれ直ちに、そして確実に補償が始まります。この補償を抜きにしては、正常な新陳代謝も正常な心もありえません。(p.22)

 

 私たちは平気な顔をして、そして素朴にも自分自身の心理を身近な人に投影してしまっているのだ。誰もがこのようにして、一連の程度の差こそあれ想像上の人間関係を作り上げてしまう。それは本質的に言えばこうした投影に基づく人間関係なのだ。(p.71)