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リーディング・クライン(Rustin & Rustin, 2017 / 松木・武藤・北村監訳, 2020)

 生きた心を持った対象とはすなわち、質問することができ、つながりを提示するリスクを引き受け、行動には意味があるという考えを手放さず、繰り返される抵抗や回避によって意欲を失うことをはねのけることのできる人である。(pp.63-4)

 

 解釈が患者に役立つようになるには、体験の考えられなさが認識され、それを持ちこたえることができる心によって知られ、そして、分析家の考える活動を通して変形されなければならない。(p.95)

 

 不安を投影できる場所を必要とする人が利用できる応答する心がない場合、形を成さない圧倒的な不安を、意味を持った名づけうる可能性のある何かに変形することは起こりえない。(p.139)

 

 同一化は、とり入れと同時に投影のプロセスを経てもたらされると、クラインはさらに論じる。他の人に自己の部分を投影することを通じて、私たちはその人を自分と似通った存在として理解する。しかしもし投影が過剰になると、自己と対象の混同につながりかねない…(中略)…反対に過剰なとり入れは、自己が対象に支配されてしまうことにつながりうる。(p.216)