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子どもの宇宙(河合, 1987)

 おそらく、人間というものは真に心の成熟を遂げるためには、一般に否定的な評価を受けている、憎しみ、怒り、悲しみ、などの感情を体験することも必要なのであろう。そして、そのようなことを体験しつつ、なおかつ関係の切れない人間関係として、家族というものは大きい意味を持つものなのであろう。ただ、大人たちは、子どもがそのような体験をしつつあることを、ある程度は知ってやることが必要で、大人の共感が少なすぎるとき、大人と子どもの絆は断ち切られてしまうことになる。(p.12)

 

 親は自分が子どもを愛しているということに、あまりに安心しすぎている。どれほど愛しているにしても、その愛をいかに伝えるか、ということ、それに、愛していることにかまけて、自分たちの行なっている行為を子どもがどのように受けとめているか、を知ろうとすること、などにおいて努力しないのは、親として怠慢であると言わねばならない。(p.15)