電灯が「闇」を克服するということは、その「闇」をめぐる、もっと正確にいえば「闇」と「光り」が織り上げる領域をめぐる想像力の源泉の一方が消滅してゆくことでもあった。(p.156)
人間を幸福にするはずであった近代の科学文明・合理主義が頂点にまで到達したという現代において、多くの人々がその息苦しさ、精神生活の「貧しさ」(精神的疲労)を感じ、将来に漠然とした「不安」を抱いているということを思うと、逆に「原始的」とか「呪術的」とか「迷信」といったレッテルを貼って排除してきたもののなかに、むしろ人間の精神にとって大切なものが含まれているともいえるのかもしれない。(p.297)