精神分析の概念を、情緒的経験と関連づけることなく抽象的に学ぶことはほとんど役に立ちません。これは、ビオンが提案し、私たちに大きな影響を与えた、情緒的に「理解すること」と知識として「知ること」との区別に対応しています。(p.91)
人と人との間の感情の流れを研究するためには、その感情の流れを感知し、取り入れることができる人間の近くを持った記録装置が必要です。感情の相互作用を研究するという特別な問題を脇に置いたとしても、家庭での自然な設定で普段の生活を営む中で母親と乳幼児の研究を行うのであれば、非人間的、あるいは踏み込むような研究や記録の方法で実施することは困難でしょう。(p.97)