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デジタル・ミニマリスト(Newport, 2019 / 池田訳, 2019)

 会話中心コミュニケーション主義は犠牲を伴う。この哲学を採用した場合、活発に連絡を取り合う人数はまず間違いなく減る。本物の会話には時間がかかる。それなりの時間を割いて会話できる人数は、ソーシャルメディアでフォローやリツイートをしたり、“いいね”やときにはコメントをつけたりできる相手、たまにテキストメッセージをやりとりしたりできる相手の数と比較すると、圧倒的に少ない。後者を意義ある交流と勘定しないことにすると、当初、社交の輪が縮まったように思えるだろう。

 この縮小したという感覚は、しかし、錯覚に過ぎない。…(中略)…会話にこそ価値がある。私たちが人として渇望するもの、私たちが生きていくのに必要な、共同体に属しているという感覚を与えてくれるものは、会話なのだ。対照的に接続は、一見魅力的に思えるが、私たちに必要なものをほとんど与えてくれない。(p.179)